風の声を聞く男①

俺の名前は『風の声を聞く男』、と言ってもシャーマンになってからは名前を捨てたので、正直言って自分の名前と言う感じがしない。
本当は私たちの言葉で名前を言えばいいのだが、お前たちの文字では書き表すことができないのでお前たちの言葉で話すことにする。そもそも、いろんな言語と言うのは物質界だけのものだから、本質が伝わればそれでいいのだ。

なぜ文字で表わせない言葉があるって?
例えば私が手をたたくとその音をお前たちの言葉では『パン!』と書くだろ。でもその音だけを聞きながら誰かが頬を叩かれる映像を見たらどう聞こえるかな? 『パシ!』などと聞こえるのではないかな?
言葉と言うものはそんなものだ、自然の音を言葉にしたとたんに言葉の次元の落ちてしまうんだ。


その男が夢に現れたのは、問題集Q10-10の答えを書こうと頭を捻っていた頃である。
そして、その男がシャーマンになるまでのことを問題集の解答とした。
それで終わったと思っていたのであるが、そうではなかった。
続きを見たようだが、断片的にしか覚えていない。
辛うじて覚えていた断片も、半覚せい状態から完全に目が覚めるまでの間に記憶から消えてしまった。
手のひらにすくった水が、指の間からこぼれるように。

多分、一昨日(日曜日)の明け方に最後の部分を見たのだと思う。
例によって、内容は頭から消えてしまった。
残ったのは、大きな喪失感と、激しい悲しみの感情。
おかげで3連休の後半2日間。深く心が沈んで何をする気も起らなかったのである。

今朝、何とか心を立て直して会社に向かう途中のことであった。
近づきつつある台風の影響か、いつもの秋の雨かは定かではないが、強い風を伴う雨の中、BLUNTの大判の重い傘をさして歩いているときだった。消えてしまった夢の断片が少しだけ蘇ってきた。
残念ながらメモをとるために雨宿りする軒先もなく、風をさえぎる壁もない、だだっ広い田んぼの何中を歩いていた。だが今度はそれなりに頭に残っていた。消えてしまった部分は書き進めていくうちに思い出すかもしれない。

帰宅したら早速書き始めようと思った。部族一の戦士『石の拳』(同じニックネームを持つ有名なボクサーがいたが、『風の声を聞く男』の言うところによると、彼の前世らしい)のことや父『馬の友達』、そして部族が消えてしまった時のことを。

ウルトラ一家 ⑦

合理主義者たちは、世界のどこにおいてもどの時代においても正しいとされる道徳が存在すると考えた。

そして経験主義者たちは、絶対的な道徳は無いと考えた。そして道徳は相対的なもので時代や場所によって異なる物と考えた。30年前に旧ソビエトで正しいとされたことは、現在の日本での道徳観念は同じではない。このように考えた。


この考えの違いにはどちらが正しいと言う結論は無い。強いて言えばどちらも正しい部分と間違った部分を持っているということになるのだと思う。


さらに言えば、普遍的に正しいものは無いと考えるほうが健全であって、人はどう生きるべきか、どんなことが道徳的に正しいのか、一人一人が真剣に考えることが求められるべきである。そうすることによって、人は『生まれてきたときに自分に贈られた自分の世界』を自分のものとすることができる。


ここまで書いた時に、『ウルトラ一家 シリーズ』の主人公は目を覚ますことになる。そして、目を覚ました世界はそれまでと同じ世界なのであろうか?

彼は自覚しつつある。

自分の属する社会から植え付けられた価値観に疑問を持つこと。

自分の価値判断に従って生きること。

そのようなことを実践することを。

そうして彼は世界を自分のものとして取り戻していくのだろう。


だが、彼が『自分の存在そのものがいったい何なのか?』と言う問題について答えを見出すのはまだまだ先のことだろう。

<完>

ウルトラ一家 ⑥

地球時間で半年が過ぎた。


これまでの経験を踏まえて、私はウルトラ一家のことをならず者集団とは断定できなくなっている。

かれらは、地球での『ミックスベジタブルの緑担当』や『海の牧羊犬』とは一線を画したものだと思うのである。


そして、私の報告もそう言う視点にたってのものとなってしまうのである。

いろいろと紛糾した結果、私の地球での任期が無期限に延長され、ウルトラ一家とも交渉役に任命された。実質的には左遷である。


交渉役の仕事柄、ウルトラの親父とは頻繁に話をすることになった。

親父と話すうちに私の中では一つの疑問が膨らんでいった。

私のいる宇宙社会ははたして宇宙において普遍的に正しい存在なのだろうか?

なぜ私は宇宙社会の価値観が正しいと思うのだろうか?

生まれた時からそう教え込まれていたからと言うことなのだろうか?

もし、私が同僚たちの言うようにウルトラの親父に丸め込まれているのだとしたとして、それとどこが違うのだろうか?


その夜、夢を見た。あの中年男の夢だ。


PCの画面には決してうまいとは思えない文章が書かれている。


生まれた時に与えられた自分の世界は、自分の判断に従って生きているもののみが生涯を通じて自分のものと出来る。自分は自分の世界を手放すことなく生きるという意味のことが書かれていた。


それを『投稿』した後、さらに書き続けた。

タイトルは『ウルトラ一家 ⑦』

ウルトラ一家 ⑤

夢の中で、私は地球で調査活動をしていた街にいた。

そこは、既存のどんな社会とも異なる社会で、簡単に言えば独裁政治であった。

しかし、独裁者と言う者はいないし、一党独裁するような政治組織もない。

強いて言えば『みんな』が独裁する世の中であった。


そこに住む者は自我意識が無く、『みんな』が決める方向に自然に流されていく。

そういう世界であった。

そしてそこでは当然ながら反対者はいないので、見方によれば平和な世の中である。

そして、不気味で恐ろしい社会である。私にとってはであるが。


街を歩いていると、住人達(中には調査活動の中で『ご近所』として知りあった人や友人となった人もいた)が私を見てひそひそと話し合っているのに何度か出くわした。


しばらく歩いていると、警察官が近づいてきた。

気が付いたら囲まれていた。

警察官の中には顔見知りの巡査もいたが、彼らには一様に表情は無い。

一人が『所まで同行願いますか?』と声をかけてきた。

本能的に危険を感じた私はとっさに逃げ出した。路地に逃げ込んだとき、何か霧のようなものに包まれた。ありきたりな展開だが、気を失ってしまった。


気が付けば、マンションのようなところで寝かされていた。

そこにいた男が言った。


『ここでは自我を持つことは危険視されるんだ。平和を乱す危険分子と見做される。』


突然、爆音とともに壁が崩壊した。

天井が屑手落ちてくる。


そこで目が覚めた。

ウルトラ一家 ④

昨日の夜中に調査報告書を完成させた。

明日に備えて、今日はゆっくり過ごすつもりだった。

何も考えず、頭を休ませよう。そのつもりだった。


気が付くといろいろ考えている。


あの中年男は何者なのか?


ジョージ・バークリーとは誰なのか?


そして、何よりウルトラ一家のボス、通称『親父』または『おやっさん』の話が何故か気にかかる。

彼はこう言った


『うちのものは、地球と地球人が好きだから全力で守りたいと思っている。身勝手とか自分の好みのためにルールを無視しているとか、批判したければすればいい。そんなことは自分でもわかっている。』


『君らの言う宇宙社会の常識とかルールとかは誰が決めたことなんだ? それが絶対的に正しいという根拠は何だ? まさか、みんながそう言うからとか言わないだろうね?』


『その宇宙社会とやらは宇宙全体なのかな? 見方によれば俺たちと似たようなもんじゃないのかな? 単に規模が違うだけで』


勝手な屁理屈と片づけることもできる。しかし、何らかの真実も含まれているようにも思える。そんな風に考えたことはなかったのに、あの夢を見てから何かがおかしくなってしまった。


堂々巡りの思考に疲れ果てた私は、いつの間にか眠っていた。

再び奇妙な夢を見た。

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一夢庵(M2)不便斎

Author:一夢庵(M2)不便斎
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あなたもかつて世界を贈られたからこそ生きているのである。

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