風の声を聞く男⑤

シャーマンと行動を共にして10年以上になる。私が聞くのは神ではなく、風の声でしかない。だから風上にあるものしかわからない。そして、神の声など聞いたことは無い。年老いたシャーマンは私にその役目を託そうとしている。確かに、他の部族の侵攻から皆を救ったことがある。たまたま彼らが風上を通り過ぎたからだった。私には荷が重い。シャーマンは大丈夫だと請け負うが、大丈夫なわけがない。

シャーマンは言う 『お前が次のシャーマンになるのは神の長が決めたことだ。逃れることはできない。』

シャーマンは元々は無敵と言われた戦士だった。シャーマンになるよりも闘うほうが性に合う。
だからシャーマンの後継者を指名されてもそれを拒否して戦に出た。
その戦で光を失い、左足の自由を失った。
そして仕方なくシャーマンになった。

神の長がシャーマンを選び、神々の運命をつかさどる。
私を通して、私の部族にどんな運命を与えるのだろうか?


その日は突然やってきた。
シャーマンに呼ばれて行くと、いきなり言われた。
『わしに命はあと数日だ。さっき神の長がそう言った』

あと数日。
私には風の声は聞こえるが、神の声は聞こえない。

シャーマンは大丈夫だと請け合うが、大丈夫だという根拠はどこにもない。


私は運命論者ではない。
自分の未来は自分で切り開いていくものだと考えているし、そうしてきたつもりだ。
若年期丸出しではあるが、今でもそう信じている。

一方で、私は自分が判断したと思いながら、巧妙に今の自分へと追いやられてきたのかもしれない。
そう思うことも少なからずある。

あの日、あの道を通ったのは偶然なんだろうか?
今日はい本早い電車で出かけよう。そう思ったのは私なのか、神の長なのか?
私にはわからないし、『風の声を聞く男』も知らない。
シャーマンなら、迷わずに『神の長だ』と言うのだろうか?
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

ボクの好きな禅問答

師匠が手をパンと打つ
そして聞く
「今音が鳴ったのは右手か左手か」

いまだにかつきちは
右手でも左手でも、答えはどっちかであってほしい
と思うときがあります^▽^

答えはそこじゃないと分かっているんだけどね^^;

砂漠や荒れ地には時としてオアシスが出現する
そのオアシスは大地が自らの重みで地下水を押し出したからできたのか
地下水が自らの圧力に押されて地上に吹き出たのか

さて、どっち^^v

Re: ボクの好きな禅問答

どっちも、元々そこにあると思います。
プロフィール

一夢庵(M2)不便斎

Author:一夢庵(M2)不便斎
私の目の前の世界は、私が生まれてきた時に私に贈られたものである。
あなたもかつて世界を贈られたからこそ生きているのである。

私の世界は私が作り動かして行くのである。
私の世界の操縦桿を握るのは私だけ。

あなたの世界は?

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最新記事
最新コメント
カテゴリ
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
フリーエリア
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
リンク
来客者数