風の声を聞く男⑥  たぶん最終回

今日の昼過ぎに、続きが浮かんできた。
早く出してほしいと言わんばかりに頭の中で飛び回っていたようであるが、あいにく今日は8時前まで仕事をしていた。
風呂に入り、ロッドの依頼鑑定を済ました後、ようやく晩飯ができた。
今食べながら書いている。
行儀が悪いのだが、食べ終わるまで待ってくれそうにない。

風の声を聞く男の夢はこれで終わりのようだ。
だがわかるのは、彼がシャーマンを受け継いだ後、戦に長けた部族に滅ぼされる運命にある。
シャーマンから受け継いだ力によって、侵入者の気配を感じたのだが、風の声に異常はなかった。
明日まで様子を見ようと思ったその夜に攻め込まれたのである。
巧みに風下に回られたためである。
風の声を聞く男の耳は、異能の力と言ってもよいほどのものである。
異能の力を持つ者は、どうしてもその力に頼る癖がついてしまう。
そしてその結果、部族は根絶やしにされた。
そして、これは神の長が決めたことである。

そんな内容のことが頭に浮かび、あの日の夢に立ち返った。
あの、深い喪失感とともに目覚めた夢に・・・・・

私は光あふれる部屋の中に立ち、私と向き合っている。
正確には上位の私と向き合っていたのであり、まわりが光に満ちていると見えたのは私の次元よりも高いものばかりで光にしか見えないということらしい。
上位の私は、風の声を聞く男の世界では『神の長』と呼ばれている。
先ほどから上位の私がやっているのはRPGのようなもので、そこには風の声を聞く男の世界があった。
上位の私は、風の声を聞く男の行動について、『風の声に異常がないことから、一日様子を見る』と言う選択をした。

なぜその選択をするのだ!?
部族の皆とは永久に会えなくなるというのに!
なぜ? なぜ? なぜ? ・・・



あの日、ここで目が覚めた。
でも続きがあったのを全く覚えていなかった。
あるいは改めて今日の明け方に続きとともにもう一度見たのかもしれない。

・・・ なぜ?


上位の私が言った。
『何度も生まれて何度も死に、すべてを身に着けた時、お前や部族の皆の魂は一つになる。物質界の尺度では永遠に感じるかもしれないが、永遠ではない』

『部族の守護神は大地に姿を変えると同時にその魂を解き放ち、部族の者たちの魂とともに長い旅に出る。もう一度一つになるまで、部族の者たちを見守り続ける』

『守護神の魂を解き放つ役割を与えられるものは、人一倍強い魂でなければならない。その悲しみや苦しみで粉々になってしまわないために』

『お前の魂はようやくそこまで育った。でも予想以上に部族を失った悲しみが深く食い込んでいる。手放すのだ。お前が手放さない限り、その悲しみはお前を苛む。お前と同じ部族にいたものも少しだがさいなまれる。』


この世界には、遠い過去に離れ離れになってしまった部族の者たちの、無数の魂に満ちているのかもしれない。
わからないだけで、見えないだけで、気付かないままに仲間に囲まれているのかもしれない。
そして、いつの日か・・・。
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風の声を聞く男⑤

シャーマンと行動を共にして10年以上になる。私が聞くのは神ではなく、風の声でしかない。だから風上にあるものしかわからない。そして、神の声など聞いたことは無い。年老いたシャーマンは私にその役目を託そうとしている。確かに、他の部族の侵攻から皆を救ったことがある。たまたま彼らが風上を通り過ぎたからだった。私には荷が重い。シャーマンは大丈夫だと請け負うが、大丈夫なわけがない。

シャーマンは言う 『お前が次のシャーマンになるのは神の長が決めたことだ。逃れることはできない。』

シャーマンは元々は無敵と言われた戦士だった。シャーマンになるよりも闘うほうが性に合う。
だからシャーマンの後継者を指名されてもそれを拒否して戦に出た。
その戦で光を失い、左足の自由を失った。
そして仕方なくシャーマンになった。

神の長がシャーマンを選び、神々の運命をつかさどる。
私を通して、私の部族にどんな運命を与えるのだろうか?


その日は突然やってきた。
シャーマンに呼ばれて行くと、いきなり言われた。
『わしに命はあと数日だ。さっき神の長がそう言った』

あと数日。
私には風の声は聞こえるが、神の声は聞こえない。

シャーマンは大丈夫だと請け合うが、大丈夫だという根拠はどこにもない。


私は運命論者ではない。
自分の未来は自分で切り開いていくものだと考えているし、そうしてきたつもりだ。
若年期丸出しではあるが、今でもそう信じている。

一方で、私は自分が判断したと思いながら、巧妙に今の自分へと追いやられてきたのかもしれない。
そう思うことも少なからずある。

あの日、あの道を通ったのは偶然なんだろうか?
今日はい本早い電車で出かけよう。そう思ったのは私なのか、神の長なのか?
私にはわからないし、『風の声を聞く男』も知らない。
シャーマンなら、迷わずに『神の長だ』と言うのだろうか?

風の声を聞く男④

酷い腰痛と背中の耐えがたい凝りがあったので、鍼治療を受けていた時であった。
もともと針は苦手で避けていたのであるが、そうも行っていられない状況だったので我慢することにした。
鍼(たぶん銀の杭ではないと思う)を何本も打ち込まれた挙句、そこから電気を流すという拷問(またの名を電気鍼治療)に耐えつつ、朦朧とする意識に古い記憶?が流れ込んできた。

シャーマンは私にいろんなことを教えてくれた。
シャーマンは元々、屈強な戦士であったそうだ。
『砂嵐の申し子』の名を持ち、砂塵を巻き起こして馬を駆り、他の部族から恐れられたという。
シャーマンになると、それまでの名を捨てる。人ではなく、人と神を結ぶ者だから。

人と馬の魂は同じで、死んだあと、多くの魂は人か馬に生まれ変わる。
その中のわずかなものがシャーマンとして生まれ変わる。
その中のわずかなものがシャーマンとして部族を導く。
シャーマンの魂のうち、わずかなものは部族の守護神となる。
部族が滅びたらその守護神はともに死ぬ。
死んだ守護神うちのわずかな者は神の長となる。
残りは大地として私たちを守り鍛える。
だからこの砂漠の砂は、いくら風に吹き飛ばされてもなくならない。
神の長が死ぬと水になる。
だから水は何よりも清らかで、希少で、命の源になる。


確かにこれは私の創作ではない。
潜在意識のどこかから湧きあがってきたものである。
では、これはいつの夢なのか?
耐えがたい喪失感だけを残して消えてしまったあの夢の断片何だろうか?
そうでないとしたら、あの夢にいつか巡り合えるのだろうか?

風の声を聞く男③

シャーマンは部族の旗印とも言える守護神との橋渡しをする存在である。
だから、戦の時には真っ先に狙われる。
自分の身を守るためにはそれなりの強さが求められる。
今のシャーマンは自分を守ることは無い。
影のように付き従う『石の拳』がシャーマンを守り抜くのだ。
『石の拳』とシャーマンの間に何があったのか知るすべはないが、シャーマンが光を失った原因が『石の拳』のようだ。

私が生まれてこの方、部族を揺るがすような戦は無い。だからこれは私が生まれる前のことである。
『石の拳』は自らの強い拳を武器に何人もの敵をなぎ倒したらしい。
『石の拳』は語った『俺の拳のほうが、相手の武器よりも早い。俺の拳は相手の武器よりも硬い』

『石の拳』闘い方や身を守るすべを徹底的に教えられた。
だがそれは万全のものではない。
『石の拳』は言う。『勝つか負けるかは人が決めるものではない。神が決めるのだ。だから生きるも死ぬも神の意志だ』

シャーマンから聞いたことがある。部族ごとに守護神がいて、守護神たちの長とも言える神がいる。
戦の勝ち負けを決めるのは神の長の仕事なのだ。
だが、私たちの力が及ばなかったら、神の長の意志は実現されない。
生きるとは神の長の意思を全力で形にすることだ。
そのためにここにわしがいて、お前がここにいる。


今朝は少し寝坊した。
起きれなかったのだが、それは昨夜は眠りが浅く1時間ぐらいおきに目が覚めたからである。
短い夢を見たが、私が母親から1週間の留守の間に自分が住んでいる借家の番をしてほしいというものであった。
ガラクタだらけのその家から、私は出ることができなくなった。
閉じ込められたからではなく、自分の意思でそうなった。
ガラクタの中には自分の、思い出の詰まったもの(今は無くなっていたり、どこに行ったか分からないもの)ばかりであった。
それを片づけることもなく、整理することもなく、その家に囚われている。
そして、誰かの気配を常に感じて気持ち悪く思う。
それは先週末に襲われた、喪失感を別な角度から見せられたのだと思ったのだが、これを考えるためか、その夢から覚めた後はしばらく寝付けず、思考がその夢から離れなかったのである。
そして、『風の声を聞く男』の夢もどこかでつながっているのかもしれない。
そして、この途方もない喪失感が解決されることを願いつつ書き進めている。今はどうなるのか予測がつかない。

そろそろ出かけなければ遅刻する。
今回はここまでにしようと思う。

風の声を聞く男②

私の父の名は『馬の友達』と言う。
馬の気持ちがわかるのだという。
実際にどんな気難しい馬でも父には心を許した。
父は自分の心に馬の心を投影させて理解するのだと言っていた。

父に尋ねたことがある。『馬の心がわかるなら、人の心はどうなの?』
人は言葉を持っている。だから人は言葉で心を書き換えてしまう。そして私に読むことができるのは書き換えた心だけ。
だから読めない。

父は生まれ持った力のために部族の皆から頼りにされて慕われているが、誰よりも孤独であった。
私は時々父の声に孤独を聞きとった。

砂漠の中での遊牧生活は、常に水を求めて旅をしていると言っても過言ではない。道標や目印の無い砂漠の中で水を探すのは簡単なことではない。川の流れや湖の場所すら決まった場所にはとどまってはいない。水を探すのはシャーマンの仕事だ。次にどの方向に進むべきか、星と部族の守り神にすがるしかない。

確か、10歳の秋だった。冬の放牧地に向けての旅の途中だった。南に移動して、あとは冬を過ごすためのオアシスを探すだけであった。探すだけと言ってもその途中で部族が全滅することも珍しいことではない。そしてその日の私は、吹き始めた北風の音がいつもと違うことに気付いた。

風の向こうの砂が重い

風の音がそんな風に聞こえた。風上に向かって走って行くとそこには水があった。部族の冬の放牧地はそこに決まった。
その夜、シャーマンに呼び出された。どうして水のありかを知ったのかを聞かれた。ありのままを語った私は、翌日からシャーマンのテントで暮らすことになった。その日から私は『馬の友達』の息子から『風の声を聞く男』になった。

母は私を生んだ後、この世を去った。だから私が居なくなった後は完全に孤独になった。
孤独であっても心は孤独ではなかった。馬たちと心を通わせ、馬たちに囲まれて満ち足りた暮らしを送った。

安心して父を捨てた(その後、名前も捨てることになる)私は、いつもシャーマンの影のように付き従う戦士『石の拳』の下で、格闘を学ぶことになった。


書いていると、次から次へと頭に浮かぶ。
頭に浮かぶままに書いていると、話がどこに移行としているのか全く分からない。
そして、忘れた夢がよみがえってきたのか、それとは関係のない創作なのかもわからない。
ロッドの示すところでは、思い浮かぶままに書くのなら、それは蘇ってきた夢である。
書くときに何らかの意図があれば間違いなくそれは創作である。
だから、とりあえず思いつくままに書き進めようと思う。
さてどうなることやら。
プロフィール

Author:一夢庵(M2)不便斎
私の目の前の世界は、私が生まれてきた時に私に贈られたものである。
あなたもかつて世界を贈られたからこそ生きているのである。

私の世界は私が作り動かして行くのである。
私の世界の操縦桿を握るのは私だけ。

あなたの世界は?

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